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 音圧競争の苦悩 

市販CDの音量は異常。そしてジェラシー。
COLUMN

 CDを作る上で、この業界の大きな問題点と課題が一つある。

 それは過剰な音圧競争である。

ジャンルにもよるが、歌謡曲やメタルなどの市販CDの音量がいかに異常にデカいか 、それは、自分がレコーディング・ミックスをすれば解る。
ちなみに一応説明しておくと、レコーディングとは、音を多重に録音していく作業、ミックス(ミックスダウン)とはいくつもの音のパート(ベース・ギター・シンセ・ドラムのバスドラム・スネア・シンバル)などの別々になってるトラックの音量や音質のバランスを調整し、最終的にステレオの2トラックにまとめてオウチのコンポやウォークマンで聴けるようにする作業である。

 まず、普通に何も考えずに録音・ミックスをすると、当然、プロの音質や音量にはならない。演奏技術だけでなく、レコーディングの技術でも出来栄えに大きく左右する。同じ演奏内容でも音質によって演奏がウマイように聴こえたり、或いは逆にせっかくいい演奏をしたとしても、レコーディングがヘタクソだと、なんだか締まりの悪い仕上がりとなる。

 ここらへんを実際に証明するために、同じ演奏内容で異なる音質バランスをして双方がどういう結果になるか、実際にmp3で「鋼鉄幻想即興曲」というお遊び音源を軽く録音してアップしてみたので興味があればそのコラムで聴いてみてください。
音質で曲が変わる!

おっと、話がそれた。
さて音量の問題。音量をデカくしたければ、フェーダー(ボリュームなどを調節するMTR[多重録音機:マルチとラックレコーダーの略]のスライダー)を上げればいい。
しかし、そんな事は子供でもできる。そして、フェーダーを上げたとしても、いつかレベルメーターの赤い部分が点灯して音が割れてくる。

ガンガンに音量を無理やり上げても、市販のCDはもっとキレイな音質でもっと音がデカイ。さて、どうなっているのか。

音量を上げる方法は色々ある。

・フェーダーを上げる(まず単純な発想)
・イコライザーを調節し、音が「手前に」聴こえるようにする
・コンプレッサーをかけて音を太くする(本来はコンプレッサーはそういう目的で使うものではないが)
・無駄にリバーブをかけない(音が遠ざかるため)

などがある。

さらに、ちょっと乱暴な考え方として、

レベルメーターがオーバーしてたって別にいいじゃん。その微妙に歪んだ音がカッコイイのなら。」(笑)

というのもあります(笑)。

特に、バンドサウンド系でヤカマシイ系な音楽スタイルの場合、ディストーションギターなどがそもそも歪んだ音なので、録音レベルメーターが頻繁にオーバーしてようが、音が割れてるのか割れてないのか解らない、と、いうか、激しい系な曲の場合、ちょっと歪んだ空気があると疾走間とか殺気を出せるし、そういう技もある。ドラムのシンバルの音なんかも軽く歪み気味だと、それだけで「ブッ叩いているような殺気」が出せるのだ。

ガンガン系な曲は、レベルメーターが頻繁にオーバーしても関係ない!(笑)

ぐらいの思い切りのよさもあってもいいと思う。(笑)


 と、まぁ色々と宅録スケールでの自主音源制作でも、ある程度デカい音量のCDを作るコツを自分なりに色々試行錯誤してきて、なんとか市販レベルの音量と同等のCDを作成するにこぎつけることができたと思う。まぁそれでも中にはバカみたいにウルサイ音量のCDがあったりするのでそういうのには敵わないが・・・(笑)。
 その暗黙の音圧(音量)競争になんの意味があるのかは謎だが、とりあえず、小さくて弱弱しい音のCDよりもデカイ方がジャンル的にみてもいいのだ(笑)。
 聴く人が、別のCDを聴いた後に自分の作ったCDを聴いた時、音量が負けていたらどうも悔しいじゃないですか(笑)。

 録音レベルの稼ぎ方は、まず、あらゆるところで余計な何かをカットし、レベルメーターが無駄に上がり過ぎないようにちまちまレベルを稼ぐ。
 コンプレッサーをかけていても突発的にレベルメーターがオーバーして音が割れる瞬間があるなどの場合は、うまくその瞬間だけオートミックスでフェーダーを下げるか、別に気にしないでおくか(笑)、その場所の手前あたりから、普通では気付かないような範囲内で密かに一時的に全体の音量を下げておいて違和感をなくす、などの手もある。

 レベルメーターが無駄に上がってしまう原因の中で、例えば、初心者のデモ音源などに多いのが、「低音域とかリバーブが無駄に多い」事である。
 私的な考え方だが、豊かな低域を必要とするのはベースとバスドラムだけである。ディストーションギターの低域なんかをガンガンだしても邪魔なだけで、周りの音を埋もれさせてしまうだけである。しかもその効果があまりない。寧ろ逆に迫力が低下する。それはライブのPAでもいえることだと思うが。基本的にギターはガーガーうるさい、何やってんのか全然解らん(笑)7弦ギターでそんな事された日にはただの音の洪水だ。
 音作りが悪いと、「音がデカイわりに何も聞こえない」という最悪の状態となる。
つまり、音が「うるさいだけ」なのはダメである。生のライブなどでもそういうバンドは多い。

リハーサルで中音を上げろ、だの、アンプの音量を上げていいですか、だのとPAさんに注文してるのとか、アホかとか思う(笑)。

 音を上げることで余計に聴こえなくなるんです(笑)。

聴こえにくいから、音を上げる、これは単純すぎて話にならないが、その勘違いはかなり多いと思う。

 まぁジャンルによっては、その「ワケの解らないような音の洪水状態」がすごくカッコイイ、という場合もあるとは思うのですが、自分的には音がハッキリ聞こえて和声の響きのニュアンスがどうたらっていうのもどんなメタルな音楽の中でも伝えたいので洪水は好きでない、なんといっても演奏している人の努力が泡になるので、下手な音作りをするレコーディングエンジニアは人をバカにしていると思う。(笑)ドラムのハイハットが聴こえないような洪水サウンドしか作れないライブハウスのPAとか、本気で死んでくれとか思う(笑)。

 音源制作に関しては、私はプロのエンジニアに頼るより自分でレコーディングミックスした方がカッコイイものができるので(笑)、そのスタイルを貫いている。それに作曲者本人が誰よりも曲のことを解っている(はず)。なのでその本人がミックスをするのが一番いいと思うのです。もしエンジニアにやってもらう場合は、「お前ゴチャゴチャうるさすぎ」とか思われそうなほど注文つけまくらないと、きっと、思ったとおりの音源にはならないだろう。(バンドでエンジニアに頼んで結構「人任せ」なミックスしたら、ナンダコリャな音質のCDにされたので結構キレて二度と人に頼んだりするもんかと思った。(笑))

さて、話がそれてるが、私的な意見だが、自主制作CDでの自主的なレコーディングの場合、そのクオリティーを決めるのは、ドラムが全てといっても過言ではない。ドラムとベースさえカッコよけりゃ基本はすべてよし。まぁ歌とかも当然ですけれども。だからってギターの存在をないがしろにしてるわけではなくて、音質による出来栄えの違いはドラムでかなり変わってくる事は確かである。

さらに省ける「無駄」としては、「リバーブ(残響音を人工的に作り出すエフェクター)のかけすぎ」が挙げられる。
あんなものはヘタクソなヤツがゴマカシに使うものである(笑)。風呂の鼻歌と同じだ(笑)。
自分が最初そうでしたから(笑笑)

 演奏技術もレコーディングも、成長すればするほど、ウェットな音は欲しくなくなってくる。 当然リバーブの効果を最大限に利用すべき場所では積極的にガンガンかけるべきだが、全てのパートに対してリバーブをかけると、それによってレベルメーターも無駄に蓄積して上がるし、音の輪郭がボヤけて「向こう」にいっちゃうので、その結果、音量のデカイCDを作れない。市販のCDを聴くとよく解るが、市販のCDの音は意外と思っているよりも「素っ気無い」音質である。素人ほど、「カッコイイ音」のイメージが「ウェットで低温もガンガンで!」と思い勝ちだが、それこそがレコーディングではカッコ悪くなる条件である。
 そもそも低域は特に家庭用コンポではSuperBassとかナンとかでボタン一つで低域を強調できたりする、そしてほとんどの人がその状態でCDを聴くので、そのことを計算に入れた上でレコーディングの音作りをするので、低域はさほど上げる必要がないのだ。メタルのCDをコンポのベース強調機能をオフにして聴くと、かなりスカスカな音だったりする。

あと、市販レベルの音量のCDにする為の策としては、やはりコンプレッサーをかけまくることである。もちろん、それによって伝えたい音の本質から外れるのはよくないが、ジャンル的にガンガンなものであれば、自分の感覚よりも大袈裟にコンプレッサーをかけて音を太くしまくって丁度かと思われる。具体的には、録音する時点でコンプレッサーをかけ、ミックスする際にもかけ、そしてマスタリングする際にもコンプレッサーをかける。
 曲調によってかけ具合は異なるが、とにかく、「こんなにかけていいのか」と思うぐらいで丁度市販のCDの音。市販のCDの音は本気でオカシイですよ(笑)。

ちなみに、一昔前のMTRにはマスタリングの機能がなく、アナログでMDなどに落として作品化するパターンも多いと思うが、まずこれでは市販のCDの音量には勝てない。

 オーディオデータをそのままデジタルで焼き付ける作業というのも、面倒ながら、確実に音量を増やすことができる。


まぁあまり難しい事を書いてもややこしくなるかなと思ったので、このへんにしておきますが(笑)、「音量」と一口にいっても、それは色んな要素があるってことなんですね。音の左右の位置や、音が手前なのか奥なのか、そういう「マジック」と、そしてセコイ機材など によって(笑)、市販のCDの驚異的な音量が誕生するのです(笑)。

 市販CDの音量のデカさには多くの自主制作者達がちょっとしたジェラシーをいだいているのかも知れないですね(笑)。CD-Rドライブ付属などのハードディスクの宅録MTRでも充分市販レベルのCDが作れるので、自主制作で音源を作っている人は頑張ってみてください。

まぁでも、もし音量が市販に勝てない場合でも気にするな!(笑)最終的にはそんなことはどうでもいい(笑)中身だ、曲だ(笑)

しかしそんなつまらない競争をレコーディング業界では本気でずっと繰り広げられてきたのだ。CDボリュームデフレとでもいいましょうか(笑)。もう音量の基準が上がればそれが当たり前になって、競争が止まりませんからね(笑)。しかし音量を稼ぐために削られている真実があることを忘れてはならない。
人々が求めているのは音量ではない。

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